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筋ジストロフィーと葬儀場と車椅子

進行性筋ジストロフィー、進行性筋圧縮症。

筋肉が次第に変性・萎縮していく遺伝性の疾患。多くは幼児期に発病し、肩や上腕、腰などの筋の変性・萎縮が緩やかに進行する。筋ジストロフィー。

三省堂 国語辞典

小学校のときの先輩が、この病気だった。

当時、小学校にスロープなんてものはない。

ローラー式の階段昇降機で上がる。

毎日、朝・昼・放課後。

先輩の大きな車椅子と小柄なお母さんを見かけたものだった。

障害者用トイレはあるが、一人で車椅子から便器に移れない。

お母さんが来て、トイレを手伝うのが日課だった。

私が小学5年のとき、担任の先生が、

「車椅子のヤツいただろ? 

アイツが昨日亡くなったって、お母さんから連絡あった。

食事中に気管が止まって、その後に肺が止まったんだってな」

苦々しい顔で、ボソっと言った。

「俺、アイツを修学旅行に連れていくことにしたんだよな。

もちろん、お母さんは遠慮したんだが。

車椅子ってのは重くて30kgくらいあってな、しかもアイツも60kgくらいある。

体力あるヤツ3人、いつも付き添わせてな。車椅子を持ち上げた。

神社の階段を上がるときは、俺も手伝ったが、本当に無理かと思った」

「ある日、お母さんが熱出してな。学校に来れなかった。

俺が代わりに便所まで連れて行って、世話してやったんだけど。

アイツ、「ケツ拭いてくれ」って言うんだ。

甘ったれんじゃねえと腹が立ったが、ドアを開けて中を見ると、

アイツの腕が尻まで届かなかった。

あのとき、もうかなり悪くなってたんだな」

それから、先輩の実家で葬儀があったことを聞いた。

当時、学区内には小さな葬儀所があった。

ただ、道具を貸すだけの会社だった。

その日は、その店の前を自転車で通りながら、

「ああ、先輩のお葬式だ」

と思った。

私が小学校を卒業する頃になると、

葬儀場は五階建てのセレモニーホールになった。

ガラス張りの中は、ホテルのロビーとフロントの様だった。

その窓の向こうから、いつも一台の車椅子がこっちを見ていた。

葬儀場は、周囲で一番高い建物で、夜中まで眩しいほどに明るかった。

お年寄りや体調の悪い人ようのだとは頭では解っている。

でも、塾帰りに、シャンデリアに浮かび上がる車椅子を見るたび、

(あれは、先輩の車椅子だ)と思った。

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コメント

 まったくもってこの世というものはままならぬものですね。

 こういう風に一生懸命に生きているのに、亡くなってしまう人がいる一方でどうしようもないようなどこからみても軽薄な輩が長生きしてゆく。

 この世は非常に理不尽なものでして。

 けれども、俺は苦しみ、悲しみは絶対に報われるものだと思います。
 良いことがあると悪いことがおこり、悪いことがおこると必ず良いことがおきています。

 その人の人生だって、悪いことばかりでもない。
 その人の身になってみると、良いことってのがゼロってことはないのだと思いますよ。
 普通の人がどうでも良い、と思えることが幸せになるのだから。

 そう考えると、幸せってものは、これは絶対に偏差値的なものではなく、非常に相対的な個別なものだと思います。
 あなたにはあなたの幸せ。
 俺には俺の幸せ。
 ってのが、まったく違うものになっているのだと。

 そして、そういう個別の幸せ、不幸を味わって人は生きてゆくものなのでしょう。

 ところで、
 二つ良いことさてないものよ。
 という言葉があります。
 
 つまり、どういうことかというと、不幸には必ず幸せな部分もあり、幸せには必ず不幸な部分があり、物事には良い部分と悪い部分がセットになっているものなのだよ。ということらしいです。

 むしろ、幸せよりも不幸に着目してみると面白いかもしれませんね。実は自分は、おこりえない幸せばかり夢想しているだけで、目の前にある不幸という財産から目をそらしているだけではないのか?ってこともあるんじゃないかと思います。

 俺なんかは、この理不尽な現代というジャングルを小野田少尉みたいに、サバイビングしてゆくのが楽しいと思っちゃっていますすねえ。

 例えばの話ですけれども、こういった俺の意見があなたにどう感じられるかはわかりません。否定的に思われるかもしれない、肯定的に思われるかもしれない、どうでもいいやと思われるかもしれない。それにしたって、必ず、それぞれの結果の中には良い部分と悪い部分があります。結局、その二つの部分とつき合わせて生きてゆく、というのが賢い生き方なんじゃないかなって、思いますよ。想像力ってのは、そういう使い方をして、ようやく意味があるものになるんじゃないかな。なんて。。


 

 

 

  

 

 

投稿: tony | 2005年12月27日 (火) 14時09分

そうですね。
何事にもプラス面とマイナス面があるものですね。

私の思い出話から、世の中の摂理について喚起されるTonyさんに脱帽です。

投稿: KLM | 2005年12月27日 (火) 18時26分

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